附属病院・感染免疫内科附属病院・感染免疫内科

輸入感染症

輸入感染症を診療される医療従事者の方へ

輸入感染症各論[腸チフス・パラチフス]

流行地

東アジア・東南アジア・南アジア・アフリカ・中南米

感染経路

患者から排泄された便で汚染された水・食品から感染。

潜伏期間

1〜3週間

症状・経過

主たる症状は発熱で、階段状にあがり(39〜40℃)、稽留熱となる場合が多くみられる(日差1℃以内、持続する高熱)。

胸腹部に現れる淡紅色の発疹(バラ疹)は特徴的な症状だが、出現頻度は低く、また出現しても短期間なので見落とされがちである。また通常高熱になると、脈は速くなるが、腸チフス患者では高熱にも関わらず、脈が速くならない(比較的徐脈)。感染初期の下痢は半数程度で、便秘傾向になることも特徴。

診断

診断は血液培養による。発熱後1週間は菌血症の状態が続き、抗生剤が使用されていなければ血液培養が24時間後には陽性となる。発熱後7日目頃から便培養も陽性となってくる。抗生剤がすでに使用されている場合は、全身状態が許せば、抗生剤を中止して血液培養を繰り返す。血液培養陰性例、特に抗生剤投与時には、骨髄培養での検出率が高い。さらに比較的徐脈、好酸球消失も重要な所見である。バラ疹は教科書的には有名だが、出現頻度は50%程度で、出現しても胸腹部に僅かであり、注意深く観察していないと見落としやすい。生化学データでは軽度から中等度の肝機能異常は必発で、GOT、GPT、LDHなどが上昇する。

予防法

カットフルーツ(自分で剥いたものは大丈夫)やサラダ、生の魚介類は避け、十分に加熱調理したものを食べるようにする。また、水はミネラルウォーターか沸騰させたものを飲むようにし、飲み物の中の氷にも注意する。食事は不衛生な屋台などは避け、衛生状態の良い店を選ぶようにする。

予防接種

日本では認可されていない。

治療その他

ニューキノロン薬を2週間経口投与するのが一般的であるが、最近耐性菌の報告が増えている。ニューキノロン薬を使えないときは薬剤感受性検査の結果をもとにセフェム薬などを用いる。腸出血の危険があるため、解熱後1週間程度の安静と食事制限が必要である。

流行地域